昔とった何とやら…か。(2)

昨日の続き
2件目。
 
マザーがおかしいのか映んないんだよ…という話。
身内(職場の人間のこと)から聞く所によると、電源が入るが、一切BIOSすら表示されない…と言う事からマザーが悪いのか?と聞かれた。
 
既に最小構成や、電源、CPU、メモリ、グラボ…こっちの資材で変えて見てもダメだという。
 
ここから介入。
完全最小構成にすべく、光学ドライブやHDDも外してみたし、CMOSも飛ばしてみたが現象は変わらず。
 
確かにマザーが死んでるっぽい。
 
マザーは、MSI P6N SLI Platinum。
nForce650iが搭載されたシリーズのマザーで、16x/1x、8x/8xでPCI-Expressレーンをレーンカードで変えられるマザーだ。
昔、ASUS P5ND2-SLI等で使われた方式が採用されている。
 
触診で見る限り、熱暴走もしている気配はない。
考えられる点は…
チップセット
PCI-Expressレーン
・レギュレータ
が、ざっと怪しい所だろうと目測を立てた。
チップセット以外は、目視でも何とかなるので、グラボを取り外す。
 
何か、違和感がある。
 
大概この時は、物理的に原因を負ってる事が多いと思うのはカンだ。
 
ここで、一通り実装部品の目視チェックをしてみる。
 
…。
 
……。
 
………。
 
どうにもこうにもPCI-Expressのx16スロットで違和感がある。
 
その正体はフラックスだ。
何故か、PCI-Eとレーンカードスロットの間に、濡れたような跡が残っている。
 
この時点でピンと来る。
 
手直し品だな…コレ。
 
確認の為に、クロスで濡れ跡を拭いてみるが、消えないので明らかに水っ気の物ではない。
 
レーンカードスロットの端子もやや斜めに上がっている点から、異形機で実装にミスって、製造拠点が手直しをした物だろう。
半田を手付けした時の焼けたフラックス跡もある。
 
疑う部分はここだろう。
 
レーンカードスロットのリードを確認するべく、ざっとみるとカードを支えるロッド部のGNDが全く半田が付いていない。
正確には、ランドには半田が盛られているがリードには付いていない。
更に、レーンカードスロットの200番ピンの半田も同じだ。
ガルウィングリードの足を肉眼で確認する分では、半田を吸った跡がない。
また170、171ピンの半田がバリになりブリッジしかかってている。
ちなみに、このレーンカードスロットのリードピッチは0.3mmだろう。
(過去の経験上0.25mmまでは肉眼で見れる)
 
他の部品はU16とシルクにある8端子ICも手付けだが、ランド0.4mm位に対し、リードが半分もずれているという粗悪なつけ方だ。
部品的にはレーンカードスロットよりは遥かに難しくはない筈だが…。
 
それはともかく、レーンカードスロットの確認の為に、以前の仕事場で愛用していたピンセット(私物)を持ち出して、ブリッジしかかりの半田クズを除去し、200番ピンを触診すると、パチッという音とともにクイッと曲った。
このパチッという音は、フラックスがクラッシュする微かな音だ。
 
完全に200番ピンは半田付ができていない。
 
これを、半田不濡れという。 
図にするとこんな感じ。
 
    リード┏━━━┓
  ___/ ̄┃部 品┃
 ■■■■半田┃   ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ランド
 
こんな感じで、半田に付いていない。
 
これを証明すべく、レーンカードスロットをぐっと手で押しながら電源を入れるとBIOSが走り、POST画面が表示された。
 
次に、手を放し電源を入れると、やはりだんまり。
 
これで、このレーンが原因である事が証明された。
 
通常、手直しには目視はもちろん、念入りに検査工程を設けている筈なんだが…この半田の付け方は初心者よりは上手いけど、修理レベルではマダマダな付け方なのに、なぜスルーしたのかが分からない。
しかも、ツヤからして鉛フリー半田なのは間違いはない。
(鉛半田と違い、融解温度が高いので付けにくい)
 
このユーザーにはかわいそうだけど、メーカー保証がすでに切れている。
今までは、恐らく辛うじてフラックスでリードをランドに押しつける形で通電ができていたんだろうが、1年を得て(1年と4日目でした…)離れてしまい起動ができなくなったという所だろう。
 
このまま修理を出した所で、このマザーを修理して戻される可能性が高く、この出来だと修理信頼性は不信が残る。 
期間的にも1か月近くかかるだろうし…。
 
他のパーツを生かす為に考えれば、新しいマザーにしてしまう方が良いだろう。